コラム>杖道稽古の健康上の利点ついて

更新:2019年6月

 

杖道稽古の健康上の利点ついて      

 みなみ野病院 内科医師 立田ひで秋(全剣連 杖道四段)

 

 運動一般がそれなりに健康に良いことは、言わずもがなと認識されていますね。

精神性を重視する武道・武術に絞ってみても同様と考えられます。

 

 程度問題ですが、人体の一部に強い負荷を長年かけていると、関節に関しては寿命があるといわれていますので、関節痛等の症状が出てくる場合もありますが、総じて生活習慣病の予防効果があることは間違いありません。 

 

 杖道の特徴といいますと、ほぼ左右対称の全身運動が多いということと、二人で行う形武道ということになるかと思います。剣術形で左太刀の技法となると新陰流などにわずかに見られるくらいかと思います。また、二人による攻防の動作は、間合いがつかめ、さらに協調性が養われるという利点もあります。

 

 形武道ですから防具も要らず、男女、年齢、身長、体重などの区別なく、その人の体力に合わせて稽古を行うことができるので、健康効果には当然優れています。

 

 得物を使う武道・武術の中で、剣術系を中心に考えてみますと、直接的に剣道に発展した流派で防具が使用されるようになったのは、江戸時代中期以降、一刀流に代表されるのではないでしょうか。その中でも敢えて形武道にこだわっていた名人もいたようです。

 

 運動量からみた場合、杖道は一般的には剣道よりは比較的少なく、心理的ストレスも適度なので、体力が劣る人にも向いていると思われます。

 

 杖道は、何の変哲もない白木の棒を使用するだけですが、現代に向いた護身術としての効果があり、広義の健康効果(病気ではなく、外傷から身を守ること)ともいえます。また、合気道や柔術、空手といった徒手の武術で、刃物を持った相手に立ち向かうのは大変です。その点、得物を使った杖道の方が容易に身を守ることができると思われます。

 

 杖道は大きな気合を出すことにより丹田が鍛えられます。東洋医学的健康法としては、呼吸から丹田を鍛えて、心身を充実させる手法が良く用いられます。

 

貝原益軒の「養生訓」も参考になります。単なる全身運動ということだけではなく、気合の充実で丹田が鍛えられれば、健康に良いことは当然です。

 

 東洋医学的な丹田とは、西洋医学では「太陽神経叢」にあたるといわれています。この身体部位に刺激を与えるということは、自律神経を整えることにもなり、心身の健康に非常に適しているということが言えます。


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